8月にあった福岡県吹奏楽コンクール高校の部の表彰式。九州大会で演奏できる代表校に、九産大九産高校(同県筑紫野市)の名前は含まれていなかった。
部長の室歩花(あゆか)(3年)は表彰式が終わった後で号泣した。
「一昨年、昨年と九州大会で金賞だったので、今年の目標はコンクールとマーチングのどちらも全国大会に出場することでした。なのに……」
部員たちもみんな悔し泣きした。
いま振り返ると、あの悔しさが全日本マーチングコンテストでの「宇宙船93号の挑戦」の始まりだった。
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「93」とは学校名「九産」の読みを数字化したものだ。九産大九産高は毎年コンクールとマーチングコンテストの両方に取り組んでいる。
今年のマーチングのテーマは「Challenge by Spaceship No.93~宇宙船93号の挑戦~」。宇宙にまつわる曲を集め、星々が輝く空間をマーチングで巡っていくような構成にした。
マーチングの指導は、同校出身の榊(さかき)純一と、マーチングの強豪として知られる埼玉栄中学・高校マーチングバンド部出身の下田珠子の2教諭が担当している。
榊はこう語る。
「コンクールの結果は悔しかったですが、上位大会に出るとマーチングの練習に影響が出ます。でも、今年の夏はコンクールが県大会で終わってしまったことでマーチングの練習に没頭できました」
今年は全日本マーチングコンテスト高校以上の部の出場枠が25団体から36団体へ大幅増。九州代表も2枠増えて6枠に。2016年の全国大会に出たことがある九産大九産高にとってはチャンスだった。
ただ、榊には16年に感じたことがあった。
「九州はマーチングのレベルが高いので、初出場のときに『全国大会でも金賞をとれるんじゃないか』と意気揚々と参加したんです。でも、結果は銅賞。全国の厳しさもわかりましたし、大泣きする生徒たちを見て『出場するだけじゃなく、いい賞をとって笑顔で終われるようにしないといかんな』と思ったんです。だから、今年は全国大会金賞に挑戦しよう、と」
そんな榊の思いがマーチングのテーマ「宇宙船93号の挑戦」に込められていた。
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宇宙船「九産」号で挑もう
6月、九産大九産高は県大会…