女性と娘。「今は個人と個人、として向き合える」という=女性提供
  • 写真・図版

 毎日が地獄だった。

 10年余り前、東京都の女性(50)は朝から晩まで怒っていた。当時、3歳だった娘(16)に。

 「起きて!」「なんで起きないの!」「つらくてもみんな起きてるんだよ!」

 「朝ごはん食べて!」「口に入れて」「かんで~!」

 娘は、朝起きる瞬間から、まるで言うことを聞かなかった。

 起こそうとすると、つんざくような声で1時間泣き続ける。起きても、ぜんまいがすぐに止まる壊れたロボットのように、せき立てないと動かない。

 食事、歯磨き、身支度をなんとかすませ、ひきずるように保育園へ連れて行く。

 帰りは帰りで、お迎えに行っても帰ろうとしない。やっと帰路についても「バイバイを言い忘れた」といって泣き、「道ばたの木の実で遊ぶ」といって泣き……。電車でもスーパーでも、かんしゃくを起こすと止められなかった。

 帰宅後は、テレビの前から動かなかった。夜は毎晩10冊以上、眠るまで延々と本を読み聞かせ、寝るのはいつも夜中だった。

 1分1秒のすべてが、全く思うとおりにならない。「なぜできないの?」「なぜ私の時間を狂わせるの?」

 ただでさえ、すべき家事は山積みなのに。腹の底から怒りがわいた。

 「うちの子、ちょっとおかしいんじゃないかな」

 一度、夫に相談したことがある。

 「でも、自分たちで何とかしなきゃ」と返されるだけだった。

 自分の心の持ちようが変われば、変わるんじゃないか。啓発本を読み、アンガーマネジメントも試してみた。座禅にも行った。

 でも何も、変わらなかった。

 「きちんとした子育て」から外れるのが、怖くてたまらなかった。

「自分のことが大嫌い」ショックを受けた娘の言葉

 「何でできないの!」…

共有