西森真実さん(右)と夫の茂人さん、万桜ちゃん=2024年4月30日、高知市、神谷毅撮影

 1歳になった長女は、重い心臓病で普通の保育園には入ることは難しい。それなら、医療的ケアが必要な子たちが通える保育園を自分でつくろう。

 高知市に住む主婦の西森真実さん(41)は、園の立ち上げに向けて走り出している。

 4月末、長女を抱いて自宅前で私を迎えてくれた真実さんは、初対面のあいさつを交わす間もなく、大きく朗らかな声で万桜(まお)ちゃん(1)に向かって話しかけた。

 「記者さん、名前に神がついてるよ。神様だね~。なんかいいことあるかもね!」

 真実さんが妊娠24週を迎えた2023年2月。この日の検査は、いつもと様子が違った。

 高知大学医学部付属病院の医師は、エコー画像から目を離さない。そしてこう言った。「上の者を呼んできます」

 おそらく左心低形成症候群で、心臓の左心房があるかないかぐらい小さい状態のため、高知では産めない――。この病気を治す専門医がいるという岡山大学病院で23年5月に出産した。

 生後3日目で大動脈を太くつくりなおすなど最初の手術を受けた。小さな体は8時間を耐えた。

 メスが入った胸は、心臓が腫れたままで縫合されておらず、いくつもの管につながれていた。

 医師に、こう言われた。「万桜ちゃんは今がんばっている。管は一本ずつ一本ずつ、外れていきますからね」

 一つひとつ、少しずつ、良くなっていく。この言葉が、真実さんと夫の茂人さん(38)にとっての希望となった。

 約5カ月後、静脈の血が肺に流れるようにする2回目の手術を行い、ペースメーカーも入れた。

同じ悩みを抱える母親たち

 万桜ちゃんは寝る前に必ず、血中の酸素濃度や心拍数を測る。風邪を引いたときなどは酸素吸入が欠かせない。

 23年の年末が近づき、万桜ちゃんの体の調子が落ち着いてきたこともあって、真実さんはだっこして、花農家の夫の仕事を手伝うため畑に出た。

 ところが。「疲れたのかスト…

共有
Exit mobile version