
2025年秋冬シーズンのパリ・ファッションウィーク(PFW)で各ブランドが新作を発表する公式ランウェースケジュールは9日間。4日目となった6日にはクロエなどがショーを開催した。イザベル・マランでは韓国の人気グループATEEZのソンファがモデルとして起用された。
【動画】2025年秋冬の新作を発表するミラノとパリのファッションウィークが開催。会場には日本や韓国などアジアのスターも数多く訪れた=後藤洋平撮影
クロエ
クロエは午前10時、パリ西部の総合スポーツ施設でショーを開催した。中心部からはやや遠いが地下鉄9番線の駅からアクセスがよく屋内に広いスペースがあるので、毎回どこかのブランドがショーに使う。確かディオールもメンズの15年秋冬シーズンのショーを開催した。なぜ覚えているかというと、客として来場したデザイナーのカール・ラガーフェルドを初めて直接目にした場所だからだ。彼は長年にわたりシャネルとフェンディの両方のデザインを担う業界のトップランナーだった。
クロエも23年秋にシェミナ・カマリがクリエーティブディレクターに就任して以降、この施設を好んでいる。今回の注目は05年に発売された名作バッグ「パディントン」の復活だ。当時を知る世代には、ミドルサイズで南京錠がついている定番バッグ。デザインはほぼ変わっていないように見えたので、オリジナルを持っている人たちが再び持つことが増えるのではないか。
洋服についてはドレープやフリル、レースといったフェミニンな要素の服に路線変更はなく、これまでのクリエーションへの自信をうかがわせる。大ぶりのファーなど、より高価格帯のアウターも目立った。
ザ・ロウの展示会
この後は中心部に戻り、前日にショーに招かれたザ・ロウの展示会に。ランウェーでは靴を履いているモデルは登場しなかったが、このシーズンも当然靴は売る。展示会場にはアリゲーターのローファーなどがしっかりと置かれていた。
分厚い高級カシミヤは随所に使われており、やはりストール風に首に巻いていたタイツもカシミヤのものがあった。ミンクのファーで仕立てたセットアップやドレスなどは、いったいどの程度の販売価格になるのか想像もできない。ザ・ロウはショーに続いて展示会も写真撮影NG。後日のPFW総括リポートでブランドから提供された写真を掲載するのでお待ちください。
ディオールの展示会
続いては、凱旋門近くのオフィスで開かれたディオールのファインジュエリー展示会に。ひときわ目を引いたのは、星や月、ハートをあしらった4連のネックレスだった。
ところでディオールはショーの翌日に洋服の展示会を開くことが多いが、今回は2日後なのだと私は認識していた。しかしPR担当者に聞くとそれは勘違いで、この日に別の場所で開催中だという。あわてて地下鉄を乗り継ぎ、セーヌ川左岸にあるオルセー美術館近くの展示会場へ。
今季のディオールは、ジェンダー研究の題材としても知られるバージニア・ウルフの小説「オーランドー」を着想源にしている。男性的なアウターに女性的なドレスを合わせるなど、元々男性だった主人公がやがて女性として生きるというストーリーと重なる装い。シャツの襟やジャケットなどに付いているコルセット状のパーツは脱着可能。シアリングのファーもあった。
トム・フォードの展示会
クリエーティブディレクターに就任したハイダー・アッカーマンが手がけ、前日に初めてショーを開いたトム・フォードも右岸の中心部ヴァンドーム広場で展示会を開いていた。ショーには入れなかったが、実物の服を見ておきたくて訪れた。
ファーストルックはレザーのセットアップ。クロコダイルやパイソンなどのエキゾチックレザーも多数使用されているが、PR担当者によると「かなり昔に買い付けをして残っていた素材を、ショーのためだけに使っている」という。テーラードはカシミヤ主体。圧縮された分厚くぜいたくな生地や、一見シルクのような質感のスーツもカシミヤで驚いた。
リック・オウエンス
この後、セーヌ川沿いの現代美術館パレ・ド・トーキョーへ。PFWの常連リック・オウエンスは毎回この施設でショーを開催する。モノトーンを基調としたモードなブランドには若いファンも多く、会場外からガラス越しにショーをのぞく人々が多数いた。新作の特徴はアウターやジャケットの襟。極端に大きく、顔の半分が隠れるほどのインパクトだった。
イザベル・マラン
この日最後のショーは、ルーブル美術館の前にある庭園パレ・ロワイヤルで開催されたイザベル・マランのショー。日本でも人気だが、地元フランスではより広く深く浸透しており、路面店はもちろん、主要な百貨店でも非常に目立つ場所に売り場がある。カジュアルからフォーマルまで様々なシーンに対応しており、今回の新作もひとことでは表現できないほどレンジの広いアプローチだった。
また、韓国の人気グループATEEZのソンファがモデルとして起用され、テーラードスーツを着用してランウェーを歩いた。招待されてショーを眺める「お客様」ではないところが大きなポイントだ。このキャスティングについてはメディアに事前にアナウンスされ注目していたが、思いの外しっかりとした足どりのウォーキングだった。
ショーが終了したのは午後9時。PFWはこの後ようやく折り返しを迎えるが、最終日まで休みなく続く。