ロンドン大学キングス・カレッジのローレンス・フリードマン名誉教授=本人提供

 再び米大統領となったトランプ氏は、1期目の政権で欧州の同盟国を軽んじ、度々対立してきた。トランプ氏の再登板は、ウクライナでの戦争を抱える欧州にどのような影響があるのか。ロンドン大学キングス・カレッジのローレンス・フリードマン名誉教授(安全保障論)に今後の見通しについて聞いた。

 Lawrence Freedman 専門は安全保障や戦略理論。「戦略の世界史」(邦訳あり)、「ウクライナと戦略術」「核戦略の進化」など多数の著書がある。

 ――トランプ大統領はウクライナでの戦争を早期に終わらせると公言しています。ただ、バンス副大統領が示唆してきた内容では、ウクライナの降伏に等しいものがありました。

 いま、ウォルツ大統領補佐官(国家安全保障担当)やルビオ国務長官といった新政権の責任ある高官たちは、降伏めいた言い方をしていません。ウクライナの「中立化」も含まれません。

 トランプ政権のスタート時点での立場は、戦争を終わらせなければならないというものです。停戦を実現させ、その後、長期的な交渉を行うのです。トランプ氏側も実際には、時間がかかることを示唆しています。1日では実現しません。

 ウクライナにとってトランプ氏側の(戦争終結をめぐる)提案に問題はないだろうと思います。彼らは停戦を望んでいます。以前は必ずしもそうではなかったのですが、今はかなり疲弊しているため、そう考えているのだと思います。問題はロシアです。プーチン大統領は、まず停戦を行い、その後和平交渉を行うという考え方を受け入れないからです。

 プーチン氏は、トランプ氏がウクライナに圧力をかけることに期待しているのだと思いますが、実際にはプーチン氏が望むような形で圧力がかかることはないでしょう。ですから、大きな課題は、トランプ氏とウクライナの間にあるのではなく、トランプ氏とプーチン氏の間にあるのです。

ウクライナの安全はどう確保するのか

 ――プーチン氏はこれまで様々な約束を破ってきました。将来的なウクライナの安全保障の確保はどうあるべきでしょう。

 ウクライナの安全保障には…

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