2027年4月の開校が予定されている新設中学校の完成予想図=つくばみらい市教育委員会提供

 建設資材や労務費の高騰から公共工事の入札がうまくいかないケースが全国各地で相次いでいる。教育・保育関連施設の工事も例外ではなく、関係者をやきもきさせている。

 東京・秋葉原と茨城県つくば市を結ぶつくばエクスプレスのみらい平駅から歩いて20分ほど。周囲に新しい住宅や工場が立つ一画に、枯れ草が生い茂る広大な空き地が現れた。つくばみらい市が新設中学校の建設を予定している市有地だ。

 住宅開発に伴う転入増が続く同駅周辺では、小学校2校が近年整備された。この2校を含む計4校からの進学先は現在、谷和原中と伊奈中。計画では2027年4月以降、生徒約1500人が新設中学校に通うことになる。県教育委員会によると、県内最大の大規模中学校になる予定だ。

 敷地面積は約3万平方メートル、地上4階建て校舎棟の延べ床面積は約1万7千平方メートルにもなる。普通教室45室や特別支援教室10室のほか、理科室や音楽室など特別教室を設ける。

 教育環境の整備や子育て支援の充実を前面に、人口増加を促してきたつくばみらい市。中学校建設に伴う巨額の財政負担や、将来在校生が減るリスクを懸念する声もある。市は保護者や住民向け説明会を重ねるなど、合意形成に向けて腐心してきた。工費を節約するためにプール棟の建設を見送るなど、決着まで紆余(うよ)曲折を経てきた。

 着工目前までこぎ着けたが、折からの物価高に水を差された。

 市は23年度までに基本設計や実施設計を終えている。ところが、万全を期して24年7月に建設工事の一般競争入札を公告したところ、応札する事業者がなく、入札は中止になった。市が「82億2500万円」と提示した予定価格が、業者側の見積価格と開きがあったという。市内の建設会社長は「業界の人手不足で下請けや孫請けで人が集まらず苦労している。あの条件では厳しい」と話す。

 市は開校予定に間に合わせるため、コンサルに委託して工程を見直すなどして工事期間を27カ月から25カ月に短縮。工事費を積算し直した結果、焦点の予定価格は「90億3400万円」と1割も引き上げた。

 落札者が決まった場合、工期は当初計画の「議会の議決翌日から26年12月28日まで」から「27年2月26日まで」と、開校1カ月前のぎりぎりのタイミングに再設定された。

 再入札の参加は2~3者からなる共同企業体に限られ、落札されるかは今月28日に判明する見通しだ。業者からの問い合わせが多く、市教委の担当者は「今回は応札されると考えている」という。

 県内では隣のつくば市で、建設工事入札の不調を理由に義務教育学校の開校が1年先送りされ、地元で混乱を招いた事例がある。

 再入札を前に補正予算案が「駆け込み」で可決されたつくばみらい市議会臨時会で、小田川浩市長は「27年4月に開校するためには、25年の早い段階で発注を行う必要がある。何としても予定通りに必ず開校しないといけない」と、強い決意を述べた。

 ある市議は「これ以上の工期の短縮は難しい。予定通りに開校できる最後のチャンスになるかもしれない」と話す。

共有
Exit mobile version