「ひろしまアニメーションシーズン2024」(8/14~18)楽しかったです。台風で新幹線が運休したせいで最後の2日間しか参加できず、全体を論評はできないんですが、印象深かったのは見事な日本アニメ(世界名作劇場)スタイルのパキスタンの長編「ガラス職人」と、米の奇才ドン・ハーツフェルトさんが新境地を開いた終末物語「ME」です。

写真・図版
ドン・ハーツフェルト監督=2016年2月

 「ガラス職人」は、ウクライナの長編アニメ「ストールンプリンセス キーウの王女とルスラン」を日本公開した「Elles Films(エルフィルムズ)」が配給してくれる(公開時期未定)そうなのでちょっと後回しにして「ME」から。いやあ興奮しました。交通費と宿泊代、これ1本で元を取ったゼ!と言いたくなる22分間でした。

 マルチョンの顔にハリガネ手足という子どもの落書きみたいな超シンプルキャラを使い、孤独や絶望や破壊衝動や幻覚や死や終末といった暗いモチーフを、透徹した詩情と下品なギャグを交えて描く、というハーツフェルトさんの世界。2016年5月23日の本欄「ぼくの死体は流れ星」で、来日したご本人のインタビューと一緒にたっぷり紹介しました。「ME」は、キャラとモチーフは変わっていませんが、ギャグは封印し詩情は抑えめでストレートな社会批判が加わり、文明崩壊の物語を神のような視点から骨太な叙事詩というか壮大な黙示録として語ります。ベタな言い方をすると「セカイ系」から「シン・ハーツフェルト」への脱皮です。私が8年前のコラムで書いてからこの「ME」までの間に短編4作を発表しているようですが未見。作風はどう変化したんでしょう?

  • ぼくの死体は流れ星

 「ME」はセリフなし。主人…

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