拉致、軟禁、投獄、死刑判決――。韓国の軍事政権下で民主化を訴え続け、何度も死の危機にさらされながら生き抜き、大統領になった政治家、故・金大中(キムデジュン)氏(1924~2009年)の半生をたどった記録映画が生誕100年の今年、本国に続いて日本で上映される。日本とも関わりの深い政治指導者の歩みを通して、激動に揺れた隣国の姿が映し出される。
日本の植民地支配下、全羅南道の離島で生まれた金氏。勉強ができ、進学を願った家族と朝鮮半島南西端の港町、木浦(モッポ)に移り住んだ。木浦公立商業学校を卒業後は海運会社を起こすなど青年実業家として活躍。朝鮮戦争(1950~53)では北朝鮮軍に捕らえられて処刑の危機にあったが、脱出した。
李承晩(イスンマン)政権の腐敗に憤って政治家を志し、60年代には国会議員に。卓越した演説力で頭角を現し、71年の大統領選では野党候補として現職の朴正熙(パクチョンヒ)大統領の得票に迫り、独裁者に脅威を覚えさせた。
73年、滞在先の東京のホテルで拉致され、5日後にソウルの自宅付近で解放される。後に韓国情報機関が「当時の中央情報部(KCIA)要員らの組織的犯行」と報告した事件だが、日韓両政府の「政治決着」で今なお未解決のままだ。
事件後も金氏は自宅軟禁や投…