平成筑豊鉄道沿線の地域公共交通計画作成や法定協設置を求める要請書を服部誠太郎知事(中央右)に手渡した村上卓哉・田川市長(同左)と、沿線自治体の首長たち=2024年10月31日午後1時5分、福岡県庁

 福岡県の筑豊地域と京築地域を結ぶ鉄道を運行する第三セクター「平成筑豊鉄道」(福智町)の経営危機を受けて、沿線の9市町村の首長が31日、県に法定協議会の設置を要請した。面会した服部誠太郎知事は、設置に向けて動く意向を示した。

 法定協は、沿線の地域公共交通計画を作成し実施するための協議の場として設置される。県も加わった上で鉄道の存廃や別の輸送手段がないかなどを協議し、9市町村の考えをまとめる。設置されると、バスの運行実験など、新たな交通網整備を想定した調査などに国の補助金を利用できる。参加自治体は協議に応じ、結果を尊重することが求められる。

 この日は、9市町村の首長がそろって県庁を訪れ、服部知事と面会。地域公共交通活性化再生法に基づく法定協の設置や地域公共交通計画の作成を求める要請書を、田川市の村上卓哉市長が手渡し、「平成筑豊鉄道の経営状態は厳しく、待ったなしの状況」と述べて支援を求めた。

 服部知事は「持続可能な地域住民の移動手段の確保のために、関係市町村の考えをしっかり聞いて丁寧な合意形成をはかります」と述べた。

 現状からの変更案としては、①路線バス②バス高速輸送システム(BRT)③鉄道上下分離、の3案を中心に検討が進む見通しだ。

 平成筑豊鉄道は、田川市や直方市、行橋市など沿線9市町村や県が出資する第三セクターで、通勤や通学など、筑豊・京築地域の生活の足となってきた。

 だが、沿線の人口減少や少子高齢化で利用者は減少傾向で、営業赤字が続いている。鉄道施設や車両の老朽化に伴う設備更新の必要もあり、同社は6月、今後30年間鉄道を存続した場合は年間約10億円の赤字が続くという見通しを公表した。

 沿線市町村は2002年以降、赤字補塡(ほてん)のために「経営安定化助成金」を出して支えてきたが、その額は年々増加しており、現在は年間3億400万円を負う。同社は6月に2億5千万円の追加出資を要請しており、2026年以降は現在の3倍以上の約10億円が必要となる見込みという試算も出している。

 沿線では、平成筑豊鉄道が観光の鍵となっている自治体もあり、鉄道存続の是非は自治体によって温度差が大きい。負担がかさむ見通しのなか、どのように合意に至るかが注目される。(岩田誠司)

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