酒井邦嘉・東京大教授

 「習うより慣れよ」。言語脳科学を専門とする酒井邦嘉・東京大教授(60)は、このことがさまざまな言葉の習得にもあてはまると言います。自然に言語を身につけていく赤ちゃんの能力は、大人の脳にも残っている可能性が高いそうです。その仕組みを聞きました。

 ――赤ちゃんは自然に言葉が話せるようになるのに、外国語の習得において、私たちはたくさん勉強する必要があり、苦労します。なぜでしょうか。

 まず、言語を「勉強する」という考え方が間違っていますね。私たちは、小学校で動詞の五段活用を学ぶ前に、普通に日本語を話しています。勉強して単語などを頭に詰め込まないと話せないという考え方をまずはやめるべきです。

 大切なのは「文」をつくる能力です。人間の脳は、生まれながらに文の構造を把握できる「普遍文法」を持つという学説があります。これは、生まれた子どもが自然に言葉を覚える「自然習得」にもつながります。人間の言葉であれば、赤ちゃんと同じように大人でも多言語を自然に習得できる可能性があるのです。

カザフ語の実験で示された脳の反応

 ――自然に言語が身につくのは小さな子どもだけではないのでしょうか。

 言語を自然に習得できるのは…

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