患者数が少ないため、診断や治療の情報が乏しく、治療法も少ない希少がん。治療の研究開発や情報提供などのため、国立がん研究センター(東京都中央区)に希少がんセンターが設立されてから10年がたちました。患者と医療者がともに取り組んできた成果が、少しずつ出始めています。
患者からの寄付、研究原資に
昨年11月30日、東京・築地の国立がん研究センター研究棟で、患者らの寄付による「希少がんグラント」の助成を受ける研究者や医療者が、成果や経過を発表する会があった。通常の発表会と違ったのは、希少がんの患者会メンバーも研究者らと壇上に上がって活動を紹介し、互いにやりとりしたことだ。
ポスター発表では患者たちが研究者の話を聞き、質問もした。優秀な研究の表彰式では、患者会から「未来への架け橋賞」が贈られ、ロビーには患者会のブースも並んで交流が生まれていた。
主催は2014年6月に国立がん研究センター内に開設された「希少がんセンター」。患者たちとの協力、協働を大切にしながら10年、活動してきた。21年に始まった「希少がんグラント」もその一つで、原資は患者たちからの寄付だ。
この日、節目を意識して、会場には10年の「歩み」を紹介する大型展示も掲示された。その制作も患者会が手がけた。
希少がんセンターの加藤陽子さんは「患者たちと協力しあうことを大切にしています。10年間、センターの根底にあるその姿勢を、グラントの発表会でも貫きました」と話した。
患者データ蓄積 治療薬開発に活用
希少がんは、人口10万人当たり6人未満で、診療上の課題が大きいものと定義され、肉腫や脳腫瘍(しゅよう)、中皮腫など200種類以上あるとされる。それぞれのがんは全体の1%に満たないが、すべての希少がんを合わせるとがん全体の約2割にのぼる。
希少がんをめぐる課題の一つに、確立された治療法が少ないことがある。
患者数が少ないため治療に関…