わずかに、捕手の手元で球が動いた。
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巨人の戸郷翔征は3日、ブルペンで25球を投じた。そのうち3球ほどが、初めて披露した球種だった。
カットボールだ。
投球後には、捕手の岸田行倫とじっくり言葉を交わした。「球が新しい動きをしてたらしくて、(岸田が)すごく感動してました。思ったよりも曲がりが良かった」
戸郷の特長は、身長187㌢の高さから投げ込む、威力ある直球と落差のあるフォークだ。
昨季は無安打無得点試合(ノーヒットノーラン)を達成。自己最多の156三振を奪い、最多奪三振のタイトルを獲得した。安定感のある投球内容で勝ち星は3年連続の12勝を挙げた。
輝かしい成績とは裏腹に、本人の心境は複雑だ。
「沢村賞といったタイトルに届かない。何かやっぱり原因がある」
何かを変える必要がある。
そう考え、今季から本格的にカットボールを採り入れようを決めた。カットボールを操ることができれば、得意のフォークがさらに生きるとの考えだ。
戸郷のカットボールの投げ方はシンプルだ。
球の握り方は直球と同じ。そこから、やや右腕を傾けて投げる。
手本にしたのは投手ではなく…