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BYDのタイの工場の建設現場=2024年3月28日、タイ中部ラヨーン、稲垣千駿撮影

アジアのデトロイトはいま

 日本の自動車メーカーが育み、アジアの「デトロイト」といわれるタイで、いま、異変が起きています。日本車の牙城に食い込み、そのシェアを奪いつつあるものは。その最前線を報告します。

 タイの首都バンコクからハイウェーを車で走ること約2時間。日系部品メーカーの工場群を抜け、緑も目立ち始めたラヨーンに入ると、突如工業団地の看板が目に飛び込んできた。

 検問所を抜けた先に、中国語が書かれた巨大なゲートと4階建ての建物がそびえ立つ。

 訪ねたのは中国の電気自動車(EV)大手BYDの工場の建設現場だ。

 BYDにとってタイは海外の重点市場。ここは同社初の海外工場で、将来的には年間15万台の生産能力を備えた、タイ最大級のEV工場になる。

 この日もゲート内外をトラックや作業員が行き交っていた。中国語が書かれた車も目立つ。

 出稼ぎに来ていた作業員の男性(25)によると、日給は他の建設現場の倍近い。近くに住む男性(30)も週6日勤務と多忙な日々を送る。「BYDが来て仕事の選択肢が増えた。できるだけ長く働きたい」と話す。研修で中国にも行ったという。

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BYDの建設中の工場近くにあるレストランの店主マントゥーサー・ブンクワーンさん=2024年3月28日、タイ中部ラヨーン、稲垣千駿撮影

 周辺には新しい住宅もできた。近くのレストランは工場建設が始まって客が増えたという。店主のマントゥーサー・ブンクワーンさん(52)は「早く完成してもっとお客さんに来てほしい」と笑みを浮かべた。

 BYDは7月4日に工場を完…

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