軍事評論家・前田哲男さん

 川崎重工業が海上自衛隊の潜水艦乗組員らに対し、下請け企業との架空取引で捻出した裏金を使って物品や飲食代を負担していた疑惑が明るみに出ました。軍事評論家の前田哲男氏は、こうした接待は最終的に私たちの税金で負担されている恐れがあると指摘します。

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 ――疑惑の構図をどのように見ていますか。

 潜水艦は深海に潜るため、鋼板の溶接などで特殊な技術が必要となります。専業メーカーでないと製造は難しいでしょう。国内では川崎重工業と三菱重工の2社しか対応できない状態です。

 防衛省・自衛隊は発注者であり、川重が契約通りに仕事をしているかを管理・監督する立場にありますが、両者の関係がうやむやになっていた恐れがあります。

 こうした接待は、慣習として横行していた側面が強いのではないでしょうか。造船所というのは、修復などで船が入っている間に乗組員が滞在できるよう、宿泊施設を持っているものです。滞在中の海自乗組員の退屈を慰めるために、川重側が「度外れ」なおもてなしをしていたのではないかと私は見ています。裏金を使っていたのであれば、さらに問題です。

■最終的には税金のおそれ

 ――これまでも防衛省・自衛隊と防衛産業の「癒着」は指摘されてきました。

 これまでの防衛省側とメーカーの汚職というのは、メーカーが有利な発注をしてもらう目的が露骨に見えているケースが通常でした。今回の疑惑は、発注の決定権を持っている防衛省の役人らに賄賂を渡すのではなく、海自の乗組員に「過剰サービス」でもてなしていた構図です。そのようなサービスをしても、もうかるということなのでしょう。

 裏金は潜水艦の建造費や検査…

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