聞きたかったこと 広島
広島市南区の小笠原伸江さん(86)は昨年、78年越しに被爆者だと認められた。原爆投下後に降った「黒い雨」に遭った人を幅広く被爆者と認定する国の新基準が設けられたからだ。
広島電鉄白島駅近くの家で育った。両親と二つ下の弟、六つ下の妹との5人暮らしだった。1945年3月、安佐郡緑井村(現・広島市安佐南区)に家族全員で疎開。農家の納屋で暮らしながら、緑井国民学校(現・緑井小学校)に入学した。
その年の8月6日。広島の市街地とは反対を向いて校長先生の朝礼を聞いていると、空がピカッと光った。「その後、背中がじんわりあったかくなったのよ」。ドーンと大きな音が聞こえる中、先生に言われるがままに地面に伏せた。起き上がると、南の空にはキノコ雲がもくもくと上がっていた。約8.5キロ先に投下されたのは原子爆弾だった。
すぐに帰宅したが、手提げかばんを学校においてきたと気付いた。再び学校に戻ると様子は一変していた。
教室には、顔がふくれあがっ…