2016年暮れにあった柔道の全日本強化合宿。角田夏実(31)は、全日本柔道連盟から渡されたアンケート用紙の前で、固まっていた。
「あなたの目標は?」
そこに書くべき言葉は分かりきっていたが、筆が動かない。本気で目指したことも、自信もなかったからだ。
その後、メンタルケアに通った。「私はここにいてはいけない人間なのかも」と本気で悩んだ。
五輪で金メダル――。
これが、柔道日本代表に課せられる最大にして、唯一の使命だ。
幼少の頃から英才教育を施された天才たちが、金メダルを目指してしのぎを削る。生き残った者が、4年に一度の大舞台に立つ。
強化のピラミッドが完成したこの20年間、女子の五輪代表はいずれも、ジュニア期から強化選手に選ばれていた。角田を除いては。
- 「4本の手」を持つ彼女を覚醒させた自主練習 非エリートは世界一に
高校3年の全国総体準々決勝…