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岸田文雄前首相=2024年12月23日、東京・永田町、相場郁朗撮影

 岸田文雄前首相は4日、東京都内で開かれた「東京会議2025」(言論NPO主催)で講演し、「戦後80年の歴史的な節目で世界を揺るがしているのは多国間主義や国連などの国際機関の価値を認めず自国利益を優先する声だ」と述べた。「米国第一主義」「ディール(取引)外交」を進めるトランプ米大統領を念頭に置いた発言とみられる。

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 岸田氏は「自国利益のための『取引』が支配する世界は、これまで米国が主導してきた自由で開かれた国際秩序を変えてしまう可能性がある。それが私たちがめざした世界の姿だとは私は考えない」と語った。「法の支配や多国間主義を守るため、今ほど世界の結束が必要な時はない」とも述べ、主要7カ国(G7)の結束の重要性を指摘し、「欧米が対立し、互いに共有した価値を尊重せず、一方的な価値をぶつけるなら不幸だ」と危機感を示した。岸田氏はまた、多国間主義の枠組みをグローバルサウス(新興・途上国)に広げる必要性も指摘した。

 ウクライナの停戦への動きについては、ロシアに接近する米国を念頭に「侵略されたウクライナの声が反映されず、侵略した側の言い分に同調するだけであれば、この地域の平和は不安定なままだ」と強調した。停戦と地域の平和の保証については「欧州だけに任せるのではなく、日本も和平への働きかけを強めるタイミングだ」と訴えた。

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