優秀賞に選ばれた俳句を紹介する橘柚菜さん(左)と谷口智紀さん=2024年6月6日午後1時55分、鳥取市立修立小学校、富田祥広撮影
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 明治中期から大正にかけて活躍した自由律の俳人、尾崎放哉(ほうさい)。母校の鳥取市立修立小学校では放哉にちなみ、すべての児童が俳句づくりに取り組んでいる。感じたことを真っすぐに――。児童たちはのびのびと俳句に向き合っている。

 今月6日、修立小の体育館に全校児童が集まった。昨年度に応募した俳句賞「第23回放哉ジュニア賞」で優秀賞に輝いた児童の表彰式だ。2年の谷口智紀さんと4年の橘柚菜(ゆな)さんが表彰状を受け取り、大きな拍手を浴びた。

 賞を主催する「放哉」南郷庵(みなんごあん)友の会は、放哉が41年の生涯を閉じた地、瀬戸内海に浮かぶ小豆島(香川県)の団体だ。この日は友の会の選者の三枝断水さんや、島北西部に位置する香川県土庄町の港育広教育長が修立小を訪れ、表彰状を手渡した。

 自由律は五七五や季語などの定型に縛られず、感じたままを自由に表現する俳句だ。谷口さんの句は〈みずはもてない〉。三枝さんは「当たり前をずばりと表現。脱帽です。永遠の真理」と講評した。谷口さんは「緊張したけど、うれしかった。俳句を考えるのはとても楽しい」と話した。

 橘さんの句は〈かいだんに虫〉。三枝さんは「うまいね。一瞬、ぞっとするシーンかな。階段から落っこちないように気をつけてね」。橘さんは「これからもいろんな俳句をつくってみたい。また表彰されたい」と笑顔を見せた。

 友の会は1999年から自由律俳句を全国公募する「放哉賞」を始め、2002年からは島内の小中学生を対象に「放哉ジュニア賞」をスタートさせた。放哉の句を若い世代に継承してほしいとの願いからだ。修立小の児童たちも07年からジュニア賞に応募し、いまは全校児童が俳句づくりに取り組んでいる。

 第23回のジュニア賞には6校847人から計1434句の応募があり、優秀賞20句、入賞20句、佳作35句が選ばれた。このうち修立小からは240人、計439句を応募し、優秀賞5句、入賞2句、佳作7句に輝いた。優秀賞5人のうち3人は昨年度の6年生で、3月末に卒業している。

 ジュニア賞の授与式は毎年4月7日、小豆島で営まれる放哉忌で行われている。今回、鳥取を訪れたことについて、三枝さんは「来年の百回忌に向けて直接来たいと思った」と説明。全校児童に向けて「また良い句をたくさん送ってください」と呼びかけた。

 表彰式では、5年生の代表5人が放哉の生涯や俳句などについて学んだことも発表した。松下裕之校長は「先輩である放哉を誇りに思い、俳句をつくることを通して、自分の見たことや感じたことを他の人に伝える楽しさを体験してほしい」と話した。(富田祥広)

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 〈尾崎放哉(1885~1926)〉 本名は秀雄。立志尋常小学校(現在の鳥取市立修立小学校)、鳥取県尋常中学校(現在の鳥取西高校)を経て、東京帝国大学を卒業。就職しても酒や人間関係でうまくいかず、仕事も家族も捨てて京都や神戸などの寺を放浪。小豆島で最後の8カ月をすごし、「咳(せき)をしても一人」など数多くの秀句をのこした。

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