走れないわけではない。選考会の日本選手権まで、2カ月弱もある。
それでも、陸上男子100メートルの日本記録保持者・山縣亮太(31)はパリ五輪への出場を断念すると決め、16日の会見で発表した。当面、レースへの出場を見送る。
予兆はあった。
4月の織田記念、予選の走りはスタートから本来のキレがなく、10秒58に終わった。次のラウンドを棄権した山縣は「1%でも可能性のある限り頑張ります」。休養の決断は、そう言い残して1週間以内に下した。
「どこまで競技を続けられるかわからない中、30を超えて五輪に出場できるかもしれないなら、ここは逃せないという思いは強かった。そういう意味でも、非常につらい」
五輪の度に調子を合わせてきた選手だけに、その苦悩は計り知れない。
このタイミングでの決断には、山縣が選手として大切にしてきたものがつまっていると思う。
今回、山縣を悩ませたのは「…