対岸から山火事の煙をみつめる漁師の古川祐介さん=2025年3月2日午前8時53分、岩手県大船渡市

 発生から6日目を迎えた岩手県大船渡市の山林火災。大船渡市はワカメ養殖の発祥の地で、避難指示が出ている同市三陸町綾里は国内有数の生産高を誇る。3月は収穫の最盛期で、延焼が続くと生産への大きな影響が懸念される。

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 2日、大船渡漁港には、山火事の影響が出ている同市三陸町綾里から多くの漁船が避難していた。対岸の山からは複数の場所から煙があがっていた。消火のために海水をくみ上げるヘリコプターのホバリング音が鳴り響く。

 「ただ煙をみるしかない。もうワカメの収穫が迫っているのにもどかしい」。綾里地区の漁師の古川祐介さんは、対岸にあがる煙をみながらそうつぶやいた。綾里沖で昨年11月ごろから育ててきた養殖ワカメの収穫まで、もう間もなくだった。最近は海水温も低く、ワカメの状況も良かったという。

 自宅などがあるのは田浜地区。今回の火災では、ワカメをボイルしたり塩蔵したりするための倉庫や漁具が燃えてしまったという。鎮火後に綾里に戻りワカメを刈り取れても、道具がなければ加工はできない。「ワカメでほぼ1年分の収入になる。これがなくなるのは厳しい。今年がダメでも、来年に向けて燃えてしまったものについてこれから考えないといけない」と話した。

 綾里地区がある三陸沖は黒潮と親潮、津軽暖流が交錯するため、漁場としては絶好の環境。特にワカメはミネラルなど栄養価が高く、全国的にも綾里ブランドとして知られている。

 綾里地区では、1月中旬ごろから湯通しすると鮮やかな緑色になる「早採りワカメ」の収穫が始まる。3月には2メートル近くに育った本格的なワカメの収穫時期を迎え、4月まで繁忙期となる。だが山林火災は特産ワカメの刈り取り時期を直撃した。

鎮火しても課題なお

 綾里漁業協同組合(JF綾里)で理事を務める亘理孝一さん(71)は、オキアミの一種でふりかけや釣り餌として使われるイサダ漁などに使う船を大船渡漁港へ避難させ、状態を確認しにきていた。「綾里のワカメ生産は日本一だというプライドがある。非常事態の中で漁協として対応を考えなければいけない」と話す。

 例年3月~4月にかけては亘…

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