社会学が専門で、「見た目問題」を研究する中京大講師の矢吹康夫さんは、国の科学研究費補助金を得て「履歴書の顔写真が採用選考の判断に及ぼす影響」について調べた。その結果は「思っていた以上に露骨」だったという。「履歴書に写真は必要ない」と主張する矢吹さんに、その理由を聞いた。
――研究のきっかけを教えてください。
2020年に署名サイトで「履歴書から写真欄もなくそう」と運動しました。その半年ほど前に「履歴書から性別欄をなくそう」という運動があったのがきっかけです。厚生労働省は21年、性別欄から男女の選択肢をなくした履歴書の様式例をつくったのですが、顔写真についてはいまだ変わっていません。
――どうやって調べたのでしょう。
ウェブ調査会社に登録している企業の人事担当者818人に、架空の履歴書を1人につき8枚見せ、書類選考を通る可能性を10段階で評価してもらいました。
履歴書に貼った顔写真は、立教大学の学生134人が実際に就職活動で使ったものを提供してもらい、男女6パターンずつの「平均顔」をつくりました。そこから、メガネ、茶髪、肥満については男女、単純性血管腫、円形脱毛症については男性のみ、眼瞼(がんけん)下垂症、アトピー性皮膚炎については女性のみ、特徴を加工しました。
大学の成績や資格、自己PRなどの内容はランダムに出現させる方式です。
その結果、もっとも低く評価されたのは円形脱毛症の男性で、次いで肥満の女性、茶髪の男性、単純性血管腫の男性という順になりました。茶髪は女性よりも男性、肥満は男性より女性の方が低く評価されるというジェンダーバイアスも明らかになりました。
――結果をどう分析しましたか。
思っていた以上に、露骨に影…