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尾木直樹さん=植田真紗美撮影
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 北海道旭川市の広瀬爽彩さん(当時14)が凍死体で見つかった事件で、市の再調査委員会は6月30日、「いじめがなければ自殺は起こらなかった」とする報告書の概要版を提出した。委員長を務めた教育評論家の尾木直樹さんに、この事件からの教訓について聞いた。

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 ――いじめが自殺の要因と結論づけました。

 クラスのなかで、彼女の特徴的な行動を指摘し、まねして笑うという出来事があった。これは明確ないじめです。いじめ防止対策推進法では、本人が「心身の苦痛を感じているもの」をいじめと定義づけています。今回もそこで判断しました。

 彼女はクラスでのいじめにより孤立感を深めていって、クラス外、学校外での人間関係に依存していくことになりました。その関係の中で性的いじめを含む、本人の尊厳を傷つける行為もありました。

 彼女はいじめというトラウマ的ストレスに起因する心的外傷後ストレス障害(PTSD)に長く苦しみ続けた。いじめ被害がなければ自殺も起きなかったわけです。いじめ被害が自殺の主たる原因であった可能性は高く、私たちはそこを明確に認定しました。いじめられた体験は、それだけ深い傷となって長く残るということです。

 ――広瀬さんが抱えていたという発達障害については。

 彼女は自閉症スペクトラム障害(ASD)であり、いじめ被害に遭うリスクが高かった。いじめ被害によってPTSDを二次障害として発症していたため、つらい体験が何度も長期にわたってフラッシュバックし、長く苦しんでいました。精神医学的に「タイムスリップ現象」というそうですが、ASDの子どもたちは、いじめ被害が過去のものとはならず、何年たってもまるで今起きたように思い出すそうです。

 彼女の自殺は、いじめとなる…

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