韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領が出した「非常戒厳」をめぐり、内乱や職権乱用の疑いで捜査を進めている警察などの合同捜査本部は30日、尹氏の拘束令状をソウル西部地裁に請求したと発表した。聯合ニュースによると、現職大統領に対する拘束令状請求は憲政史上初めて。
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合同捜査本部は尹氏が3度にわたって出頭要請を拒否したため、拘束令状の請求に踏み切った。
ただ、尹氏は弾劾(だんがい)訴追を受けて職務停止中とはいえ現職大統領のため、同地裁は拘束令状の発付について慎重に検討するとみられる。
韓国の憲法は、大統領は在職中に刑事上の訴追を受けないとする「不訴追特権」を認めているが、内乱などはその例外と規定されている。
拘束令状は、合同捜査本部に加わる「高位公職者犯罪捜査処」(公捜処)が請求した。これに対して尹氏の弁護側は30日、公捜処には内乱罪に関する捜査権限はないなどと主張し、令状の請求は違法だとする意見書を裁判所に提出した。
弁護側はかねて、捜査よりも憲法裁判所での弾劾裁判が優先されるべきだ、という尹氏の立場も明らかにしている。
2023年に最大野党・共に民主党の李在明(イジェミョン)代表に対する検察の逮捕状請求が棄却されるなど、韓国では令状が請求されても裁判所が棄却するケースも多い。