尖閣諸島。手前から南小島、北小島、魚釣島=2013年、沖縄県石垣市
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 尖閣諸島沖の日本と中国の地理的な中間線の日本側に、中国が大型ブイを設置した問題は、発覚から約10カ月が経ちます。日本政府は中国側に抗議していますが、日本による撤去には踏み切らず、慎重な姿勢です。しかし、海洋法に詳しい坂元茂樹・神戸大名誉教授は「撤去は法的に可能」と指摘します。

  • 中国ブイ10カ月経つも放置 尖閣周辺「法的グレー」に苦慮する日本

 ――尖閣諸島沖で中国のブイが発見されてから、約10カ月が経ちます。

 この問題の難しさは、そもそも両国の間で、排他的経済水域(EEZ)と大陸棚の境界画定ができていないところにあります。画定までの暫定的な措置として、日本は地理的中間線を境界としているけれども、中国はそれも認めていません。

 領海基線(干潮時の海岸線)から200カイリ(約370キロ)までがEEZで、沿岸国の主権的権利が及びます。大陸棚が200カイリまで延びていなくとも、国際法上その海底や地下は大陸棚とみなされます。ところが中国は、日中の間の海底にある大陸地殻はつながっておらず、沖縄トラフというくぼみのところまで中国の大陸棚は延びていると主張しています。

 日本はそうした考えはとっておらず、日中の境界を画定するまでは、両国の地理的中間線までをそれぞれの主権が及ぶ範囲としよう、という立場です。国際判例に照らせば、大陸棚を沖縄トラフまで主張できるという中国の考えは根拠に欠けていて、日本の主張が妥当なのですが。

 日本政府の対応をめぐり、坂元名誉教授は「慎重になるのは分かる。でも、日本がどう振る舞おうと、中国は尖閣諸島は自国の領土だとの立場で行動している」と指摘します。記事の後半で紹介します。

 ――日本政府は、ブイの設置は国際法違反だと認定する一方、その撤去に関しては明確な規定がないとして、慎重な姿勢です。

 法的に撤去は可能だと思います。

 まず、日本としては、現場海…

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