昨年にも増して不透明感の強まりそうな2025年の政治。この1年の始まりに、政治取材の経験の長い曽我豪、佐藤武嗣、高橋純子の3編集委員が国内外の政治を縦横無尽に語る。初回は、30年ぶりの少数与党国会や自民党、野党、憲法をテーマに議論する。司会は、園田耕司・政治部次長。
曽我氏「疑似政権交代より権力分散に民意」
少数与党国会
――昨年の衆院選で少数与党政権が誕生した民意をどうとらえるか。
曽我 本来、衆院選は政権選択選挙だ。だが、自民党の「疑似政権交代」に民意はNOを突きつけ、立憲民主党の政権交代の訴えにも万全な数字を与えなかった。結果的に政権が選択されたわけではない。官邸主導の「1強体制」ではなく、国会主導の権力分散状況を民意が選んだのかもしれない。「自分たちの暮らしに直結する政策課題で幅広く合意形成を行って欲しい」という民意があるならば、少数内閣国会だからこそ、もっと広い合意形成ができるチャンスがあると思う。
佐藤 確かに、少数与党は野党の意見に耳を傾けざるを得ず、「熟議の政治」に一定の期待ができる。一方、少数与党のデメリットもある。政治システムは異なるが、韓国でも与党が過半数割れし、政権基盤の不安定化に焦った権力者が強硬手段に出た。また、極右政党と連立を組んだイスラエルのネタニヤフ政権のように、自らの政権維持のために、内政・外交が極論に引っ張られて過激化する恐れがある。
高橋 少数与党をポジティブに評価している。民意が面白いと思うのは、一人ひとりが意図したわけではないが、集合無意識のような形でこうした結論になること。選挙制度をいじって無理やりにでも二大政党化するんだ、という1990年代の政治制度改革が裏切られている。やはり、民意をなめるな、ということだ。「システムさえ作れば政治は変わるという発想はおかしい」という結果が今回の選挙に出た。
自民党論
――派閥の裏金事件などをめぐり自民の統治のあり方への根源的な不信が突きつけられている。
佐藤氏「軸なき自民 石破降ろしやっても……」
曽我 疑似政権交代は、前政…