リハーサル中の秋山和慶さん(右)と下野竜也さん。2019年の広島交響楽団ワルシャワ公演から=広響提供

 1月26日に亡くなった指揮者の秋山和慶さんは、多くの後進を厳しくも温かく育てる名伯楽でもあった。長く薫陶を受けてきたNHK交響楽団正指揮者の下野竜也さんが、恩師から受け継いだものを振り返る。

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 昨年末でちょうど55歳、出会った時の先生の年齢になりました。30年もの間、比類ない深化を遂げてゆく先生の背中を仰ぎ続けてきました。ひとつひとつの曲を、ただひたすら丁寧に整える。その淡々とした作業の膨大な積み重ねがどれほどの豊かさをもたらすものか、目の当たりにしてきました。

 時間ができても休まず、僕ら後進の指導とか、吹奏楽、合唱、オペラ、ジュニアオーケストラ、若い頃はバレエまで、とにかく広範囲の現場に情熱を注いでいらした。それも、決して義務感からじゃなくて、ただただ音楽が好きだから。

 1960年代、スポンサーの契約打ち切りなどで経営破綻(はたん)した東京交響楽団の屋台骨を築き直したのをはじめ、札幌交響楽団、九州交響楽団、中部フィルハーモニー交響楽団など、地方の楽団にもしっかり目配りされていました。

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 誰もが「優しい人」というイメージを持っていると思うけど、こんな厳しい先生はいなかったと僕は思います。勉強してない人には「はい、次」。その程度の勉強なのね、と。でも、しっかり勉強してきた人には、つっこんだ内容の指導に入ってくれる。ここはこういう音楽だろう、みたいな深い議論になると、ああ、こちらを向いてくださったと安心する。

 斎藤秀雄先生みたいに怒鳴っ…

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