6歳年上の見合い相手は、決して自分を大きく見せない、物静かな人だった。同じ岐阜県生まれで、中学卒業後からメーカーに勤め、働きながら夜間の高校、大学を出たという。23歳だった伊藤知恵子さん(73)は当時、「ちょっと頼りない」とさえ思った。
お見合い写真は着物で撮るものと知らなくて、普段着ていたワンピースで撮った。その写真を見て、相手の濶(ひろし)さんは「意思のある人」と思って結婚を決めたと、あとで聞いた。
教材の営業職をやめ、家庭に入った知恵子さんに、濶さんは「僕の稼ぎは、2人で一緒につくったお金だからね」と、勉強を始めるよう勧めてくれた。専業主婦が当たり前の時代。「こんなことを言ってくれるのか」と驚いた。
結婚式や新婚旅行の準備を1人でさっさとこなす妻を、濶さんは「やると決めたら、猪突(ちょとつ)猛進するタイプ」とみていた。「目標があったらいいんじゃないかと思って」。後にそう語った。
子育てしながら、法曹の世界に
軽い気持ちで、新聞広告で目…