「国庫金の詐取」として、国税庁が対策を強化するのが、不適切な消費税の還付申告だ。直近1年の追徴課税は約577億円で、過去最高に上る。昨年10月からは、事業者が消費税を正確に申告するための「インボイス(適格請求書)制度」が導入されたが、撲滅への道のりは遠い。

 事業者は、商品を売った際に受け取った消費税から仕入れ時に支払った消費税を引いて納税するが、支払った分が多ければ申告後に還付される。輸出販売に消費税はかからないため、仕入れ時に払った消費税は申告すれば還付される仕組みだ。

利益ゼロでも還付申告「悪質性高い」

 還付申告は、利益ゼロのペーパー会社でもできるため、不正な届け出が少なくない。

 税務調査による追徴課税は毎年およそ6千億円だが、消費税の還付申告の不正や誤りはその約1割を占める。

 還付申告は年約25万件で、昨年6月までの1年間に法人・個人合わせた6932件を全国の国税局が調べたところ、約6割の4338件で不正や誤りが見つかった。国税庁は「悪質性が高い」とし、2022年には東京国税局に対策本部を設置するなど税務調査を強化してきた。

 今年7月には、東京国税局が、東証プライム上場企業「エンビプロ・ホールディングス」の子会社で、リサイクル資源会社「NEWSCON(ニュースコン)」(東京都中央区)に対し、23年までの3年間で過少申告加算税を含め消費税約8億円の追徴課税(更正処分)をしたことが関係者への取材でわかった。

 同社や関係者によると、NEWSCONは製鋼原料などのリサイクル資源に加え、中国で需要が高まった雑貨品などを含めて輸出免税の適用を受ける申告をした。しかし国税局は、雑貨品などを実際に輸出したのは仕入れ先業者だとし、免税を認めなかった。

 エンビプロ社は取材に「承服できず、国税不服審判所に不服申し立てをした」と話した。

 こうした不適切な申告に加え、免税制度を意図的に悪用する手口も目立つ。具体的には、訪日客以外への免税販売や、仕入れとは異なる商品や数量の輸出だ。

 昨年以降、①SNSで募った「買い子」に免税販売した業者に約2億円②飲料水を高級化粧品と偽り中国に輸出した業者に約35億円――などの追徴課税が明らかになっている。

 国税庁は昨年10月、税控除や還付を受けるには、要件を満たした領収書などの保存を原則必要とするインボイス制度を導入し、不正防止を図る。

 一方、税務調査で当局が「完敗」し、追徴課税が認められなかったケースもある。

 中国人が社長を務める貿易会社(東京)は昨年、東京国税局から消費税約8億円の追徴課税を受けたが、国税不服審判所に申し立て、今年6月にすべての課税が取り消された(審理は非公開)。

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