モノやサービスの価格が上がり、国民に物価上昇の実感が広がる中、岸田文雄首相は「デフレ脱却宣言」を当面見送る方針だ。デフレ脱却は日本経済再生を目指す歴代政権の「宿題」であり、岸田政権も最重要課題に掲げてきた。目標達成は実績アピールにつながるはずだが、物価高は国民の負担感が増すリスクも伴う。内閣支持率の低迷が続く首相は、身動きが取りづらい状況だ。
「今年は物価上昇を上回る所得を必ず実現する。来年以降は、物価上昇を上回る賃上げを必ず定着させる」
4月27日、東京・代々木公園で開かれた労働組合の中央組織・連合の大会で、首相は強調した。野党に支持が多い労組の催しに駆けつけて決意を語ったのは、本気度を示すためでもあった。
首相は昨年10月、臨時国会の所信表明演説で「デフレ完全脱却」を目標に掲げ、税金増収分の一部を還元すると表明。その後に1人4万円の定額減税を今年6月に実施することを決めた。
今年の春闘では大企業を中心に5%を超える賃上げが実現している。首相は「デフレから脱却する千載一遇の歴史的チャンス」とし、政府内でも水面下で成長型のマクロ経済政策への転換が検討され始めている。
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国民の暮らしに直結する政策…