写真・図版
末冨芳さん

 「授業1コマを40分に、子どもたちの実態に合わせて学校が決められることは大切です。しかし、教員の働き方改革やそれ以上に、子どもたちへの学びの視点からは、それだけで良いのか?多くの読者が疑問を持たれているのではないでしょうか」

 12月8日配信の記事「授業1コマの時間、小中学校ごとに柔軟化 文科省が後押し検討」に、教育行政学、教育財政学を専門とする日本大学文理学部教授の末冨芳さんは、こうコメントした。

 小中学校の授業時間は、「小学校45分」「中学校50分」が一般的となっている。記事では、日本語指導が必要な子が20年前の3倍に増えるなど学校ごとに課題が多様化する中、画一的な授業からの転換が必要だとして、1コマあたりの時間を各校の特性に応じて変えやすくする方向で文部科学省が検討していることを報じた。一方、今の学習指導要領(2017年改訂)で教える内容が増えたことで、子どもや教員への負担増を訴える声が強いことも伝えた。

 末冨さんはコメントで、授業時間の柔軟化は大切だとしながらも、おおもとになっている学習指導要領のあり方を問題視した。

 1次関数の知識が定着していない大学生の存在を例に挙げ、義務教育で基礎が置き去りになっているのは「詰め込み主義」の弊害であり、「こなすだけの授業」になっているのではと推測した。また、項目数の多い観点別評価が教員の負担を増やしているとも指摘。評価の仕方についても、「そもそも子どもの意欲、測定可能ですか?」と疑問を投げかけた。

 これらの問題意識から、学習指導要領の詰め込み主義、そして意欲など子どもの内面まで評価しようとする観点別評価について、改善を急ぐことを提案した。

 そして、教員と子どもたちが安心して、落ち着いて学べるカリキュラムや評価、さらには子どもも教員も尊重しあう学校風土を「ゴール」とした上で、その実現のために「学校運営を支える政府の教育投資も拡充したいものですね」とコメントを結んだ。

 この記事や、末冨さんのコメント全文はこちらから(http://t.asahi.com/woh4)。

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