問題を起こす子どもに厳格な罰則を科す「ゼロトレランス(寛容度ゼロ)」という生徒指導法を見直す動きが全国の高校で広がっている。米国で実践され、生徒の規範意識を高めると国内では20年ほど前から広まったが、なぜ見直されているのか。

 ゼロトレランスは、校則や指導基準に従い、小さな問題行動もあいまいにせず厳格に罰する生徒指導の考え方。米国での実践例を調査した文部科学省の政策研究機関「国立教育政策研究所」の生徒指導研究センターが2006年に紹介し、広まった。当時は子どもによる凶悪事件やいじめが社会問題化し、第1次安倍政権が「教育再生」の方針を示していた時期だった。

カード累積で重い処分

 国内では、「カード指導」「段階的指導」と呼ばれる手法が用いられることが多い。指導のたびに教員が子どもにカードや切符を渡し、累積回数に応じて保護者呼び出しや停学などの重い処分を科している。

 沖縄県教委は昨年5月、全県立高校に対し、こうした指導で生徒に機械的に処分を科すことの廃止を求めた。

写真・図版
本部高校で使われていた「マナーカード」の裏面には、違反の累積による罰則が書かれている

 きっかけは21年に県立高校で起きた生徒の自殺だった。

 第三者再調査委員会は昨年3月、主要因を「部活顧問による理不尽かつ激烈な叱責(しっせき)」と指摘。直接的原因ではないものの、不適切な指導が行われた背景として同校で行われていた「イエローカード」による指導を挙げ、「生徒の個別性に配慮しないゼロトレランス的指導理念は、生徒の心理的変化や身体的・行動的兆候を学校が発見できなかった遠因」と言及した。

 半嶺(はんみね)満教育長は…

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