2022年の「夏の甲子園」で応援を背に力投する智弁和歌山の塩路投手。応援団には中学3年生だった清水利穏さんも加わっていた=2022年8月13日午後3時28分、阪神甲子園球場、小林一茂撮影
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 初めて立つ甲子園球場のグラウンドは、思っていたよりも何倍も広かった。緑の芝生が、どこまでも続いているようだ。

 そして、こう感じた。

 「これが選手が見ている景色。見下ろされているみたいで、怖いな」

アルプスの夏音

高校野球の応援の演奏をめぐる物語

 智弁和歌山の吹奏楽部でバリトンサックスを吹く清水利穏(りおん)さん(高2)がそこに立ったのは、昨年6月の「甲子園ブラスバンドフェスティバル」。各地の学校が高校野球の応援曲を披露し合う祭典だ。

 それまでにも、アルプススタンドで応援曲を奏でたことはあった。だけど、いまはグラウンドで視線を集めている。ぐるりと囲む観客席に、そそり立つ壁のような圧迫感を覚えた。楽器を構える手に、今までにないプレッシャーがかかった。

遠くに見えたスタンド

 智弁和歌山に小学校から通い、テレビに映る甲子園での応援団に憧れた。初回の攻撃の時に必ず流す「アフリカンシンフォニー」、力強いドラムと重厚な和音で球場の雰囲気を一変させる「ジョックロック」。その楽しそうな姿は、まるで輝いているように見えた。

 応援団員やチアリーダーを務…

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