写真・図版
14座目のシシャパンマに登頂し、シェルパ2人と記念撮影をする渡辺直子さん(中央)=本人提供

 ざくざくと踏む雪の感覚と広がる絶景。山との出会いが、引っ込み思案の女性を変えた。福岡県出身の登山家で看護師の渡辺直子さん(43)は2024年、世界に14座ある標高8千メートル峰の全制覇を果たした。日本人女性初の快挙だが、「特別なことじゃないよ」と伝えたいという。楽しいから、続ける――。そんな力をくれる「体験」を子どもたちにも、と動く。

Changin’(4)

2025年は巳年。脱皮を繰り返し成長する蛇のように、「変化」しながら前に進む九州ゆかりの人たちに話を聞きました。

 《24年10月9日、14座目のチベットのシシャパンマ(8027メートル)の頂に立った》

 ハプニングだらけでした。その前に登頂したマナスル(8163メートル)で失禁して登山ウェアを汚し、臭いまま登るのは絶対嫌、とシシャパンマのベースキャンプで洗ったら、急に出発が数日後に。小さなテントを立てて日光で温め、何度も裏返して乾かしました。気管支や肺をやられていて体調も悪く、何度も吐いた。頂上ではほっとしてちょっと泣いたけど、特別な感動はなくて。いつもの1座で「ただの記録だな」と。

 《子どもに野外活動を体験してもらう当時のNPO法人「遊び塾ありギリス」(福岡市)の企画に参加し、山にはまった》

 小学4年で冬の八ケ岳(長野…

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