
生来の引っ込み思案な私である。誰にも会わずに一人で黙々とこなせる作曲という仕事は、うってつけと言える。しかし当然だが、完全に一人で物事が完結するわけではない。
作品が初演される際には、事前に稽古場に出かけて音の確認などをする必要があるわけで、楽譜だけ渡してハイ終わりでは済まない。初演に限らず、講習会などに作曲家が出向く機会はしばしばあり、自室にこもって一人の世界に浸っているだけが作曲の仕事ではないのだ。
特に若い頃の私は人前に出るのが苦手だったので、リハーサルなどの現場であれこれ申し上げる時間を重荷に感じていた。作曲者と演奏者の間に起こるイメージのギャップを極力埋めていくためにコミュニケーションは必須なのだが、何とも情けない。
ところが最近になって、その「現場」が楽しくなってきた。この自己変革は、あるとき思いがけない形で私に修業の場がもたらされたことから始まった。
2016年4月に起きた熊本…