殺害現場となった、夫婦の自宅=2024年11月27日午後3時5分、神奈川県横須賀市久里浜台2丁目、手代木慶撮影

 接見室で、アクリル板越しに対面した被告の男は、腰が曲がり、小柄でやせていた。白髪は薄くなり、顔にはしわが深く刻まれている。耳も遠い様子だった。

 記者が大きな声でゆっくり、はっきりと問いかけると、被告はうつむき加減にぽつり、ぽつりと答えていく。

 神奈川県横須賀市で、84歳の夫が81歳の妻の首を絞めて殺害したとされる事件。50年以上連れ添った夫婦に何が起きたのか。記者との接見に応じた夫は少しずつ、妻とのことを語り始めた。

 起訴内容などによると、浦辺登志男被告は11月24日、自宅で、妻秀子さんの首を帯で絞めて窒息死させたとされる。

 県警によると、被告自身が「妻の首を法被のひもで締めた」と110番通報。殺人容疑で逮捕された後の調べに対して、認知症の症状が進み、歩くのもおぼつかなかった妻の介護を続けるなかで「先を悲観した」と供述したという。

 記者は逮捕された直後に一度、浦辺被告に接見を申し込んだ。この時は、被告から「気持ちの整理がついていないので、今は会えません」と断られた。

 だが、再び申し込んだ12月13日、浦辺被告は接見に応じた。

 明るく飾らない性格だったという秀子さん。その思い出を語る中で、妻のおちゃめな一面を思い出して、ふと笑みを浮かべる場面もあった。

 一方で、ここ数年の秀子さんの様子に話が及ぶと、顔を曇らせた。

 浦辺被告との主なやりとりは以下の通り。

―体調はいかがですか?

 前よりは眠れるようになりました。よく眠れるわけではありません。

―秀子さんはどんな方でしたか?

 明るくて、立ち振る舞いが上手でした。

―何と呼んでいたんですか?

 「ひでこちゃん」と。

―家事は秀子さんが担当していた?

 はい。料理や洗濯を。

―好きな手料理は?

 いやあ、これと言ってないですね。……(被告自身が)サバが苦手なんですが、皮をはいで裏返して出してくることもありました。嫌いなのに(笑みを浮かべる)。

―物忘れがひどくなってからの様子は?

 過去の記憶がなくなっている感じでした。ふさぎこむことが多くなりました。会話はできるけど、少し経つと内容があやしくなりました。

―秀子さんにいま、どんなことを伝えたいですか?

 「後を追えなくてごめん」、と。

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