熊本市の慈恵病院が、国内初となる「内密出産」があったことを公表した半月後の2022年2月。参議院予算委員会で、国民民主党の伊藤孝恵参院議員(49)は、当時の後藤茂之厚生労働相に迫った。
「赤ちゃんは生まれて2カ月たつがまだ無戸籍の状態。(医師は)逮捕の危険性もあるという報道もある」
内密出産は、病院の担当者にのみ身元を明かして出産する。母親の名前を記さない出生届を出すのは、刑法157条(公正証書原本不実記載罪)に抵触するのではないか――。当時、そんな議論があったが、後藤厚労相は「法的な問題はない」と述べ、違法ではないと明言した。
現在は、病院が出生届を出すのではなく、病院がある熊本市が職権で戸籍をつくる運用になっている。
10月、東京都千代田区の参院議員会館。伊藤さんは取材に「違法性が阻却されただけでは十分ではない」と話し、「国にしか内密出産のグランドデザインはつくれない」と法制化の必要性を強調した。
日本では心中以外の虐待死のうち、生まれたその日に亡くなる子どもが多い状況が続いている。加害者のほとんどが母親だ。「産んだ母が子を殺す。こんな悲しいことがあっていいのか」。新生児殺や遺棄をなくしたいという思いで活動してきた。
望まぬ妊娠に悩み、孤立出産に至る女性たちがいる。どう子と女性の命を守り、支援するのか。韓国と日本の取り組みを追った。
「熊本1カ所でいいのか。費…