東北電力女川原発(宮城県女川町、石巻市)2号機の運転差し止めを求める訴訟の控訴審判決が27日、仙台高裁であった。倉沢守春裁判長は訴えを退けた一審・仙台地裁判決を支持し、住民側の控訴を棄却した。
女川2号機は2011年3月の東日本大震災で押し寄せた約13メートルの津波で地下が浸水し、原子炉を冷やす設備の一部が使えなくなった。東北電は防潮堤を標高29メートルにかさ上げし、原子炉建屋の耐震性を上げる工事を今年5月に完了。原子力規制委員会の審査を経て10月、震災原発として、東京電力福島第一原発と同じ沸騰水型炉(BWR)として初めて再稼働した。
訴訟は21年5月、原発から5キロ圏(PAZ)内よりも外側の5~30キロ圏(UPZ)内の石巻市民17人が起こした。住民側は、県と市の避難計画では、放射性物質が放出される事故が起きた場合、避難者の被曝(ひばく)の程度を調べる検査場所周辺の渋滞で、30キロ圏内からの避難に時間がかかり、自家用車のない人向けの避難用バスも確保できていないと主張。「無用な被曝を強いられる」と訴えた。
昨年5月の一審・仙台地裁判決は「住民側は事故の発生を前提としているが、事故が起きる危険を具体的に立証していない」と訴えを退け、避難計画の実効性は判断しなかった。
控訴審で、住民側は改めて避難計画には実効性がないと主張。東北電力側は「計画上、自治体は段階的に避難指示を出すとしており、渋滞は起きない。バスの確保は可能」と反論した。
原告弁護団によると、控訴審が始まると、瀬戸口壮夫裁判長(当時、その後定年退官)が避難計画の中身を判断する方針を示していたという。
原発の避難計画を巡っては、日本原子力発電東海第二原発(茨城県東海村)の差し止めを求めた訴訟で、21年3月の水戸地裁判決は、周辺自治体の一部で計画が整備されていなかったことなどから差し止めを命じた。原電、住民側ともに控訴し、東京高裁で係争中。(阿部育子)