石川県の奥能登地域にある四つの公立病院で、2024年10月の患者数の合計が前年の8割にまで回復したことがわかった。1月の能登半島地震の発生後、外来は5割、入院は3割に一時落ち込んでいた。ただ、急激な人口減少により、いずれの病院も財政難が深刻化している。
珠洲市総合病院、市立輪島病院、公立穴水総合病院、公立宇出津総合病院(能登町)が朝日新聞の取材に答えた。
4病院は発災直後、断水や建物の損傷により、入院患者の転院搬送を余儀なくされた。輪島や宇出津では入院している患者が一時期11人にまで減少。珠洲でも20人前後という状態が2カ月ほど続いた。
その後、仮設住宅への入居が進むにつれ、病院にも患者が戻ってきた。月ごとの延べ患者数を前年と比較すると、輪島は10月に入院が67%まで回復。外来も74%だった。
一方、輪島は4~9月の入院患者数が23年の3~5割にとどまっており、4病院のなかで最も回復に時間がかかっている。事務部長の河崎国幸さん(55)は、介護施設の入所者がほとんど被災地の外に搬送され、「入院が必要な人がいなくなってしまった」と説明する。
住民の半数近くは高齢者で、「医療と介護は一体」。施設で状態が悪くなった人が病院に入院し、良くなったら施設に戻るという循環がある。施設の復旧が進まないことで、被災地の外に避難した高齢者が戻りづらく、病院への影響も長期化しているという。
さらに、9月の豪雨で道路状況が悪化。市街地への交通が不便になった地域の住民が一部、穴水や宇出津に通うようになったとみられる。
河崎さんによると、震災前は100人前後の入院患者がいて、「なんとかトントン」だった。患者数が戻りつつあるとはいえ、まだ60人ほど。4月からは18床の介護医療院を立ち上げ、ほぼ満床の状態が続く。だが、既存の病床は175床から100床に運用を縮小しており、今年度は5億円を超える赤字を見込む。「急に需要がなくなった。民間企業なら撤退です」
珠洲は、震災と時期が重なる…