町野川漁協の存続に尽力する冨成寿明さん=2024年6月5日午後4時30分、石川県輪島市町野町、安田琢典撮影

 石川県輪島市の町野川に、今年も天然アユが遡上(そじょう)している。ただ魚の増殖や環境保護に取り組んできた地元の漁業協同組合は、元日の地震で存続の危機に。仲間に犠牲者も出るなか、ミシュラン「一つ星」の料理人でもある組合員は川を守りたいと前を向いている。

 能登町の鉢伏山を源流域とし、輪島市町野町地区で日本海へと注ぐ全長21キロの町野川。奥能登最大の河川だが、能登半島地震で護岸が崩れて水が濁り、今も川に崩れ落ちるように倒れた家々がある。

写真・図版
石川県輪島市町野町の中心部を流れる支流の鈴屋川両岸には損壊した家屋が残る=2024年6月5日午後2時15分、石川県輪島市町野町、安田琢典撮影

 町野川と支流に漁業権を持っているのが同町地区の住民らが組合員となっている町野川漁協だ。魚の増殖と自然教育の観点から、地元の子どもたちと毎年、アユやカジカの稚魚を放流してきた。より豊かな河川環境をめざし、石川県立大のグループとヤツメウナギの人工授精にも取り組んできた。

漁協の組合員は震災で半分以下に

 そんな漁協の組合員は昨年末時点で38人。ただ地震で数人が亡くなり、市外へ転居する人も相次いでいる。最年少組合員の冨成(とみなり)寿明さん(41)は「連絡が取れない組合員もいて、人数は半分以下になった可能性がある。このままでは存続が難しくなる」と打ち明ける。

写真・図版
町野川漁協の存続に奔走する冨成寿明さん=2024年6月5日午後4時31分、石川県輪島市町野町、安田琢典撮影

 冨成さんは日本料理店「富成」の料理人の顔も持つ。町野川で育ったアユやカジカ、モクズガニなどを使った料理は評価が高く、ミシュランガイド北陸2021特別版で一つ星を獲得。環境や社会問題と向き合っているとして「グリーンスター」にも選ばれた。

 川にひかれたシンガポールの…

共有