インタビューに応じる山下真・奈良県知事=2024年12月12日午前10時38分、奈良市登大路町、阪田隼人撮影

 奈良県はこれまで観光資源に甘え、ただ観光客が訪れるのを待つ「大仏商法」に陥っていた――。昨年、県はそんな取り組み不足があったと総括したうえで、全国下位の宿泊者数をいまの倍近い年間500万人まで増やす目標を掲げた。どんな方策があるのか、山下真知事に聞いた。

 ――荒井正吾前知事の観光政策に対する評価は?

 前知事がホテル誘致に力を入れたのは、先見の明があったと思っています。4500万人の観光客が来るのに、泊まってくれる人は300万人足らずというのは、どう考えてももったいない。大阪や京都に近いから泊まってもらえない、というのは言い訳。奈良に泊まる魅力が何かと考えた時に、やっぱりホテルの質と量というのは必要だと思うんです。

 一方、なら歴史芸術文化村(天理市、2022年開設)のような施設は建設費や維持費がかかるにもかかわらず、それほど観光地としての魅力の向上にはつながらないんじゃないかと思っています(整備事業費100億円・年間支出額6億円)。ここの目玉は文化財の修復現場を見られることだが、1回見たらもう1回行こうという気にはなかなかならないと思うんですよね。大きなハコモノを作って観光客を集めようというのは、無理があったと思います。

 それよりも、おもてなしの向上。奈良に来る個人顧客に対するサービス向上や利便性向上の方が私は意味があると思っています。

奈良は「安い・浅い・狭い」

 ――昨年5月に「観光戦略本部」を立ち上げた際、奈良の観光の現状を「大仏商法」や「安い・浅い・狭い」と資料で指摘していた。

 大仏商法というのは、辞典に…

共有
Exit mobile version