松本盆地にあるリンゴ園の一角に「ふじ」の古木が枝を伸ばしていた。「こんな太い木を切って更地にするって聞いたらね、忍びなくて」。石原徳義さん(55)がそっと枝に手を伸ばす。2年前、後継者がいなくて廃園を考えていた90代の農家から、このリンゴ園を借り受けた。リンゴはこの冬、海を渡り、シンガポールと香港へ輸出された。
石原さんが社長を務める農業法人「野の香」は、松本盆地周辺の約20ヘクタールで農作物を栽培する。ブドウやリンゴ、スイカ、野菜が主力で年商1億円ほど。株式会社として立ち上げてから5年で、広さを約20倍に拡大した。後継者のいない農園を紹介されたり、地域の農家が経営に加わったりして事業を広げた。
残業ゼロへの工夫も
沖縄出身の石原さんは21年…