「『おれには、なかなかかなわないぞ』とうれしそうに言ってくれたのは、ある種の応援の気持ちもあったのか」と、父・唐十郎さんとの思い出を語る俳優・大鶴義丹さん=5月5日、東京・渋谷の伝承ホール

 4日に亡くなった唐十郎さんの息子の俳優・大鶴義丹さんは5日午後、出演中の舞台「後鳥羽伝説殺人事件」(東京・渋谷伝承ホール)の昼公演と夜公演の合間に会見を開いた。

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 唐さんは劇作家、演出家、俳優として活躍した。大鶴さんは、そんな舞台人としての父について「舞台に出ることをみんな重圧に感じるが、うちの父はいつもうれしそうに舞台に飛び込んでいった。ここがほんとに自分が幸せで生きる空間なんだと楽しそうに飛び込んでいく」と振り返り、「若い頃は反抗心でおやじを超えてやろうという気持ちもあった。でも(父は)時代に愛されたこともあり、普通のものと違う、ある種、神がかり的なものを持っていた」と評した。

 大鶴さんは4日も舞台に出演していて、夜公演が終わった頃に亡くなった唐さんの最期をみとることはできなかったという。「役者は親の死に目にあえないとよく言われるが、最後まで粋な演出をする父だな、と。死の瞬間をもってまでも、(役者とはなにかと)教えてくれた。最後の最後まで演劇人だった」(藤崎昭子)

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