写真・図版
空井護・北海道大学教授

 衆院選での与党過半数割れを受け、新たな政権の枠組みをめぐる政党間の調整が続いている。二大政党制と多党制、今後の日本政治はどちらへ向かうのか。主要政党の数と政党政治の安定は関係があるのか。現代政治分析が専門の空井護・北海道大教授に聞いた。

投票行動の変化は小さいが議会はバラバラに

 ――今回の総選挙の結果をどう見ますか

 選挙が盛り上がったとは、お世辞にも言えないでしょう。投票率は53.85%、前回2021年と比べれば2ポイント程度の減少、「戦後3番目の低投票率」の称号を前回選挙から見事奪い取りました。

 政治学では、各政党の相対得票率を使って、前回の選挙と比べた場合の今回の選挙の変化の程度(変易性)を考えることがありますが、自民敗北といっても小選挙区部分の相対得票率は前回比10ポイント、比例部分で8ポイント程度と減少幅は小さい。国民民主躍進といっても同2ポイント、7ポイント程度の増加に過ぎず、立憲民主党は前回並み。国民民主党やれいわ新選組は得票率を伸ばしましたが、新党の突然の大躍進などは認められませんでした。票の内訳に着目するとき、民主党大敗、維新が登場し、自民党が政権を奪還した12年の総選挙と比べれば、変易性は小さかったと言えます。

 ただ、票を議席に変換した結果をみると、かなり大きな変化が生じました。各政党の議席率を使って「有効政党数」を計算すると、議会のバラバラ度合いが分かりますが、選挙直後の時点で、2.7(21年)から3.5(小選挙区部分2.9、比例部分4.8)へと急上昇しました。これは自民党と社会党が議席を分け合う「55年体制」の成立以後に限れば、自民党が下野して細川護熙政権が誕生した93年選挙に次ぐ高い値です。

 有権者の投票行動はトータルで見れば小幅な変動にとどまりましたが、それでも議会のバラバラ度合いは顕著に高まりました。

 ――ある面では「多党化」したわけですね

 はい。ただ、当面の政党間競争において、小選挙区部分でしっかり議席を確保して「主役」や「準主役」を演じられる政党は、自民党(議席率41%)と立憲民主党(同32%)に限られます。今後の政局は両党を中心に展開すると見ています。

戦後初の「レアな内閣」

 ――首相指名が注目です

 記事の後半では「極右」「極左」の勢力が増す欧州と比較しつつ、多党制のもとで国民が政権選択の実感を持てるすべを考えます。空井さんは、野党が選挙連合を組まずに選挙に突入し、多党化したことで「党首や幹事長が政策協議に乗り出し、多数派を形成するという現在進行中の動き」を問題視します。なぜでしょうか。

 報じられているようにこのま…

共有