ばら教室KANIの教壇に立つ若原俊和室長=岐阜県可児市
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 岐阜県可児市が運営する「ばら教室KANI」は、日本の公立小中学校に初めて通う外国籍の子どもに日本語を教えている。設立から20年目を迎える全国の先駆け的な存在で、自治体からの視察も多い教室には、二つの言葉が掲げられている。「自信」「覚悟」。言葉を教えるより大切だというその意味を若原俊和室長に聞いた。

 製造業が盛んな可児市は、工場で働く外国人が多く、人口の約1割が外国籍だ。ばら教室KANIは、市が実施した外国人の子どもの就学実態調査で、不就学の子が多かったことから2005年に設立された。日本語が不自由な子は、来日後4カ月程度教室に通い、基礎的な日本語や算数などの学習、学校生活のルールから箸の使い方といった日本の文化や習慣までを学ぶ。35人程度が在籍していて、国籍はフィリピンとブラジルで9割以上を占める。

 ――どういった状況で来日する子どもが多いですか。

 親が先に来日して、生活の基盤がある程度できてから子どもを呼び寄せる家庭もいれば、一緒に来日する家族もいます。母国のフィリピンやブラジルに友達や祖父母もいて生活してきたなかで、親の都合で来た子どもたちは最初、「日本語を勉強しないといけない」という必要感はありません。不安と恐怖がいっぱいで逃げ出したい、でもなじまないといけない。そんな葛藤の中で日本の生活が始まります。

 ――教室に入った子どもには、まずどんなことを教えるのですか。

 この教室での第一の使命は「安心」を与えることです。言葉はコミュニケーションツールだけではなくアイデンティティーでもあります。言葉が通じず「何を言っているか分からない」と言われてしまうのは尊厳を否定される状態でもあります。なので、まず母語の分かる指導員を通して話を聞き、その子を受け入れること、安心させることが大切です。母国でどんな生活をしていたのか、深く知る努力をしないと心を開いてくれません。子どもの心を耕してやわらかくしないと、言葉もルールも入っていきません。

ローモデル少ない日本で、一緒に考える

 ――その後、子どもたちに日本語を勉強したいと思ってもらうために何をするのですか。

 どんな自分になりたいか、を…

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