【動画】能登半島地震1年―被災者が語るいま―

タクシー運転手の浜塚喜久男さん=2024年12月5日、石川県珠洲市、田辺拓也撮影

 能登半島地震で津波の被害を受けた石川県珠洲市。発災から1年近くたった昨年12月、被害の大きかった同市宝立町の鵜飼地区を10カ月ぶりに訪ねると、景色が変わっていた。

 以前、記者が現地を訪れたのは同年1月下旬。倒壊した家屋が並び、雪が降り積もっていた。今は家屋の解体が終わり更地となった場所と壊れたままになっている家屋が混在。重機の音が鳴り響き、がれきを積んだ他県ナンバーのトラックが行き交う。

 同市のタクシー運転手、浜塚喜久男さん(70)はあの日、仕事中で客を乗せていた。

「津波が来るぞ」という誰かの言葉が聞こえ、タクシーを残して客と高台に避難。その後、浜塚さんの目に飛び込んだのは川を遡上する津波に流される自分のタクシーだった。夢中で撮影した映像がスマートフォンに残る。

 「風景が変わって、よその町みたいな感じになってきた」

 タクシーのハンドルを握りながら、つぶやいた。建物が解体され、更地が増えたことで、震災前は見ることのできなかった場所から海岸線が見えるようになったという。

 以前は市内の総合病院を利用する高齢者の送り迎えが多かったが、めっきり減った。夜に営業する飲食店も減って、タクシーで帰宅する人も少なくなり、収入も半分ほどになったという。

 浜塚さんの自宅は地震で倒壊し、昨年8月に公費解体。いまは仮設住宅で暮らす。

 住み慣れた珠洲から離れたくないという思いが強い浜塚さんは、自宅があった場所にもう一度、家を建てることを考えていた。ただ、自宅の回りは更地になり、付き合いのあった近所の人は帰ってこない。現実を前に迷いが出てきたという。

「これから地区をどう運営すれば」

 かつて孫と遊んだという自宅…

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