生成AI(人工知能)に学習させた声優らの声で歌を歌わせるなどした「AIカバー」と呼ばれる動画がネットに投稿され、声優らが権利の侵害を訴えている。ただ、声そのものの権利をどう守るかは、従来の法の枠組みでの限界も指摘される。
「アニメ『推しの子』の登場人物、星野アイに、音楽ユニットYOASOBIの曲『アイドル』を歌ってもらった」「歌手Adoの曲『唱』を、ドラえもんの声で歌わせてみた」
動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」上には、そんな動画が多数、投稿されている。アニメのキャラクターやアイドルなどの声を学習させたとみられる生成AIを使って、歌などを歌わせる「AIカバー」は、一つのジャンルとして定着しつつある。
インターネット上では、自分の声をリアルタイムで声優などの声に変換したり、録音した声などのファイルを変換したりできるアプリやソフトがいくつも販売されている。また、文章や楽譜を声として出力できるものもあり、こうしたツールを使っているとみられる。アニメキャラクターの声が再現できるとしたボイスチェンジャーも販売されている。
多くは、個人が自分の好きなアニメのキャラクターなどに好みの歌を歌わせ、同じ趣味の人たちとつながって楽しむことが目的とみられる。一方、再生回数などによって収益を得ている可能性もある。こうした動画の作り方を数千円で販売すると呼びかけるアカウントもあった。
声優らは危機感を募らせる。アニメ業界従事者らでつくる「日本アニメフィルム文化連盟」(NAFCA)の事務局長で声優の福宮あやのさんは、「声優にとっては声そのものが商売道具。個人の楽しみを超えているものや、人格権の侵害ではと思う事例もある」と指摘する。
福宮さんが所属する日本俳優連合が調査したところ、AIで声が模倣された動画は膨大にあり、中にはアニメキャラに性的なセリフをいわせるコンテンツもあったという。
著作権や商標権は認められる?
著作権法では、生成AIによ…