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女子がずらっと並ぶ写真の中に、ぽつんと男子がひとり――。
「これが僕です」
大学時代に同じ講義を受ける仲間と撮った1枚を指さし、野原慎太郎さん(42)は言った。3月の第97回選抜高校野球大会に21世紀枠で初出場する横浜清陵の野球部監督は、全国的に珍しい男性の家庭科教諭だ。文部科学省の2022年度の学校教員統計調査を元にした推計では、高校で家庭科を教える男性教諭は約440人。高校の男性教諭全体の0・3%しかいない。
「1千回以上、同じことを聞かれました。『男なのに、何で家庭科なの?』って」
野原監督は神奈川・東海大相模出身。00年春の選抜大会で控え投手としてベンチ入りした。登板機会はなかったが、チームは優勝を遂げた。
夏が終わると、1日13時間の猛勉強。同校から初めて横浜国立大の教育学部に合格した。
国語、理科、社会、音楽……。教職課程を学ぶなかで、家庭科の授業にひきつけられた。
「例えば、食品添加物とどう付き合っていきますか、とか家族の条件とは何でしょうか、という授業。他の教科とは違い、答えを自分で考えることが本当におもしろかった」。家庭科と言えば調理や裁縫のイメージが強かったが、ジェンダーや家族について学ぶ「家族関係学」に興味を持った。
自身の母は専業主婦で、父は…