
相手企業に同意を得ないまま買収を仕掛ける事例が国内で目立っている。「敵対的買収」は、会社乗っ取りのイメージを重ねるなど、日本ではネガティブなイメージがあったが、どんな変化が起きているのか。企業買収に詳しい東京大学の田中亘教授(会社法)に聞いた。
――企業が相手の同意を得ずに買収に乗り出す事例が目立ってきました。
「事例は以前からありました。ただ、こうした買収をするのは、以前はアウトサイダーみたいにみられがちだったと思いますが、最近は第一生命ホールディングス(HD)やSBIHDなど、日本でも評判を確立した企業が買収者になるようになりました。買収者側の法律アドバイザーも大手法律事務所がなるようになり、様変わりした印象です」
――なぜ買収を仕掛けるようになったのでしょうか。
「まず根底に株主構成の変化があります。日本では1990年ぐらいをピークに、上場会社の株式の半分はほかの事業会社や銀行、保険会社が持っていました。この株式の持ち合いの比率がだんだん下がり、いま時価総額ベースで、株式の過半は国内外の機関投資家が持つようになりました」
「企業にとっては、成功が見込めるようになったのが大きな理由だと思います。株主構成の変化に加えて、昔は買値が高くても株を売ってくれない株主がいましたが、今は基本的に値段が高ければ売ってくれる。魅力的なプレミアム(上乗せ)を付ければ売ってもらえるという勝算が出てきました。あとは、国内外の競争が非常に厳しく、同意のある買収だけが選択肢だとスピード感がなくなるため、買収を仕掛ける必要性も出てきたと思います」
■「どう守るか」から「真摯に…