受刑者が「塀のない刑務所」で生活し、民間の職場に通勤しながら社会復帰をめざす――。罪を犯した人の立ち直りに主眼を置いた新たな仕組みが模索されている。
7月、愛媛県今治市にある造船会社「新来島(くるしま)どっく」の工場で、ほかの従業員にまじって、男性の受刑者が火花を散らして溶接をしていた。男性を含む10人余りが平日、敷地内にある専用の寮で生活し、工場に通う。「松山刑務所大井造船作業場」という名称がつけられているが、一般の刑務所にあるような高い塀や鉄格子もない。そして、受刑者は週末、塀に囲まれた松山刑務所に戻る。
受刑者が働く様子を、お好み焼き店を展開する「千房(ちぼう)」の中井政嗣会長やアーティスティックスイミング指導者の井村雅代さんらが視察していた。中井氏らは、日本財団が設けた「塀のない刑務所の整備に向けた研究会」の委員を務める。
研究会には法務省も協力し、7人の委員らが6月から議論を重ねた。近く「塀のない刑務所」の設置を法相に求める提言をまとめる方針だ。
突然姿を消してしまう人たちがいる
こうした刑務所を設けようと…