バイオリンを持ってウクライナの首都キーウの街中に立つイリア・ボンダレンコさん=2022年7月19日、ウクライナ・キーウ、細川卓撮影
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 昨年3月に亡くなった坂本龍一さんが生前、ロシアに侵攻されたウクライナを思い、つくった楽曲がある。制作を坂本さんとコラボしたウクライナの青年は「恩返し」の思いをこめ、オーケストラの曲を完成させた。その楽譜は今年、坂本さんの娘、美雨さんに贈られた。

 崩れてがれきとなった壁や屋根が散乱する風景に、美しいバイオリンの旋律が流れる。ウクライナの首都・キーウの西にある都市・ジトーミルでウクライナの音楽家、イリア・ボンダレンコさん(22)が奏でる動画がユーチューブで公開されている。演奏されているのは、ボンダレンコさんと、坂本さんが共同制作した「Piece for Illia」(イリアのための曲)という曲だ。

 2022年2月、ウクライナへのロシアの侵攻が始まり、ボンダレンコさんは人道支援のための寄付を呼びかけようと、世界各地のバイオリニストと一緒に演奏する動画を公開した。

 米国でそのニュースを見た坂本さん。すぐにボンダレンコさんのSNSをフォローした。ミュージシャンの友人たちからの提案を受け、ボンダレンコさんとのコラボが実現した。坂本さんは生前、朝日新聞の書面インタビューに、この「Piece for Illia」について「戦争の理不尽さへの怒り、悲しみ、ウクライナへの思いをこめました」と答えた。

  • 2年前、ボンダレンコさんが語ったこと

 翌年、坂本さんは亡くなった…

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